はっきりと見えた彼の姿。
あたしと同じ色のツンツンした茶色い髪、ちょっと着崩した制服。
意外と童顔な顔。
でも、幼すぎずかっこいい。
女子が見たらきっと騒ぐだろうな。
そんなことを考えながら、あたしはつい見惚れてしまった。
「やっと顔見せてくれた」
その声でハッと我に返る。
やさしく微笑んでそう言った彼は、さっきまで腕をつかんでいた手をあたしの頬に移動させる。
涙で濡れた頬を暖めてくれるかのように、優しく包み込んでくれた。
彼の手から、頬に伝わる彼の体温。
その暖かさには、なにか安心するものがある。
それがなにかは、今のあたしにはわからない。
だけど、これだけはわかった。

