ーーーーー……。
楽しい時間はあっという間にすぎる。
怖いくらい、あっという間。
拓都はもうそろそろ自分の部屋に帰りたそう。
時間も遅くなってきたし、そろそろ私達は帰ることになった。
「雅恵ちゃん、また来てね。」
「ええ、勿論。
うちにも来てね、なんならお泊まりでも。」
お父さんが聞いたら呆れるよ?
結婚してはや18年。
そろそろ諦めてるだろうけど、旦那をそっちのけで遊んでるなんて、おばあちゃんに知れたら…。
まあ、薄々は勘づいてんだろうけど。
「ほら、拓都、二人を送ってって。」
「…なんで。」
「女の子が夜に歩いてたら危ないでしょ。」
はいはい、と拓都がスニーカーを履く。
ゴメン、と一応心の中で詫びた。
「じゃあね。」
母親達の挨拶を、黙って聞く。
私と拓都は無言だった。
「さゆちゃんもまたね。」
バイバイと手をふって、私は外に出た。
風が吹き抜ける。
今日は一段と風が強い。
私はマフラーに顔を埋めた。
「拓都、寒くない?」
ジャージを一枚羽織っただけの拓都は寒いはずだ。
しかし、拓都は首を振った。
「大丈夫。
練習の時は半袖なんだから。」
「あらまあ、大変ね。」
「走ってれば温まるから。」
…どうしてお母さんには微笑むかな。
私には真顔のままなのに。


