「関谷、」 「なんだ」 流れる沈黙に、あたしはなるべく、関谷を意識しないように、フロントガラスを眺めながら、会話を続ける。一杯しか飲んでないのに酔ってるのかもしれない。 「仕事、忙しいんでしょ」 設計士の関谷。その仕事がいまいち分からないあたしには『大きい仕事』のイメージがしづらいけど、忙しくない筈ない。 「暇だと困るな」 関谷はあっさりと言う。その口調がいつも通り単調過ぎてあたしはつい、続く言葉を飲み込んでしまった。