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店の前には、黒いスマートな車。正直、車とかに興味ないから車名とかは知らないけどラインが綺麗な車だとは思う。
さすがに見慣れた筈の光景でも、いまだに当たり前の様に助手席に乗るのには抵抗があるなんて言ったらこいつは笑うかもしれない。
「…連れ出してよかったか?」
あれだけ強引に登場しておいて今更な疑問文。
「…ええ。もう帰る所だったし。だけど、迎えに来るなんて思わなかった」
場所は言ってあったし、もうすぐ帰る、と簡潔にメールを打った数分後だった。
「一人じゃ危ねーだろ」
「別に」
「…色んな意味で。心配かけんな」
関谷はそれだけ言って、アクセルを踏む。
顔が、熱い。
もう、なんなのよ。
関谷の一言一言は今でも容易くあたしの温度をあげてしまう。
少しタバコの匂いが混じる車内は、それでも清潔感があって、綺麗な横顔に、やっぱり、なぜか、目線の行き場を失ったままあたしは口を閉ざした。

