続・絶対温度-私の定義-


あたしもつられて視線を後方に移す。女性客の視線が自然にテーブルから離れて、その男に集まって、やっぱりその垂れ流しのフェロモンを何とかしなさいよ、と思う。



「紗織。帰るぞ」



そして、そんな目線なんか全く気にしてないように、関谷はあたしの名前を呼んだ。



思わず、赤面しそうになるのをこらえて、取引先の上司に挨拶をしてからあたしは席を立つ。上司、って言っても、山都さんの他はもう一人穏やかなおじさんが一人だけ。後は社員ばかりだから、あたしは視線が集まらないように足早に店を出た。