《目覚めるんだ。》


俺を呼ぶのは……誰だ?


《覚醒しろ、煌の王よ。》


やめろ……

やめてくれっ……


《我が絶対の力……貴公に授けるぞ。》






「うわぁぁああ」

赤髪の少年は酷い汗をかきながらベッドから飛び降りた。

彼の自慢の綺麗な深海の様な瞳は、可哀想な事に、ぐっちょりと涙で滲んでいた。

そんな彼のベッドの下で布団を敷いて寝ていた少女は、少年に向かって蹴り掛かかる。

「あーもう、うっせーな!
莫迦、阿呆、お前の母ちゃん中年腹!」

長い黒髪を、後ろで一つに結んでいる少女は、きっと八重歯を剥き出して怒りを露わにすると、早口で言う。

彼女の口の悪さといったら、今ので解ってもらえたに違いない。

幸い蹴られたものの、家具が滅法無い此の部屋。

ただ床に酷く頭を打っただけで済んだ。


ドン ドン ドン


部屋の外の階段から地響きがする。

「やべっ」

彼女がしまったとばかりに口を塞いだ時にはもう時既に遅し……

地響きの主はドアを乱暴に開けると乗り込んで来ると、少女の頭を思いっきり殴った。

瘤ができた頭が、シューと、此の鉄拳の強さを讃える熱気を発していた。

「ケリア婆っ」

「婆じゃないよ! か・あ・さ・ん、だろうフィルリア!」

緑色のワンピースの上からピンクのエプロンを着た小太りの主婦は、蜜柑色の髪を後ろで団子型に括っていた。

べた付く油っぽい肌は小麦色。

どすの利いた声で少女……フィルリアに渇をいれると、筋肉がっしりの腕で彼女を持ち上げた。