けど何も行動を起こさない聖に、僕はうぬぼれてしまった。

僕は誘拐犯。

そして、こんなことをしている。

不覚にも、それを幸せだと思ってしまった。

こんな年の離れた小さな少女に恋をするなんて。

幸せだと思うなんて。

本当に、僕はバカげていると思う。

でも、幸せだと思っている自分がそこにいる。

そんな自分に、心の中でフッと笑った。

そっと、聖から躰を離した。

「――悪かったな…」

呟くようにそう言った僕に、聖は何も言わなかった。