あいつは、いつも肝心な所で自分を見せない。


それが、ただの意地なのかそれとも性格なのか。どちらにしても、あんな女初めてで、真っ向から見つめるレンズ越しの癖に逸らさない強い瞳が、俺の調子を狂わす。



ボトルをしまおうとまた冷蔵庫を開けた時、ヒヤリとした空気を肌に感じながら、思わず手を止めたのは、



…俺はガキか



無意識に突っ込む。声に出なかっただけ大人だ、俺。


透明なガラスカップにきちんとラップがかけられた、桃とミカンの缶詰め。


起きたら、食べろ。そういう事だろう。



母親でさえそんなありきたりな事しなかった。あいつがこんな事をするのを想像して何故か笑えた。