一緒に階段を上りながら

ふと思ってしまったことに落ち込む。


私、嫌なやつだ。

助けてくれた水野くんを見て

稜佑だったらな、なんてさ。


少しの沈黙の後、

「ああいうのは吹っ切って無視したほうがいい」

軽蔑の目でさっき歩いてきた方を

水野くんは睨んだ。


「うん、そうする……」


知らなかった、今まで稜佑が

ああいう人たちから遠ざけてくれていたなんて。


それがなくなったってあの人たち言ってたな。

もう本当に関わってもらえないんだ。


自分の足元に目線を落として歩くと、


「あ、すいません」


誰かと肩が当たる。


咄嗟に顔を上げると

ジャージ姿の茜。


部活に出たけど教室に何かを忘れてしまったのか、

鞄を肩にかけていた。


「あ……」

名前を呼ぼうとして

彼女の鋭い視線に気づく。


茜は未だ繋がれたままだった

水野くんと私の手を見ている。