――何で、


どうして、


待って、


嫌だ。




「――田さん!……山田さんっっ!!」



後ろから手首をつかまれ

はっとする。


全力疾走した体は

ものすごい熱を帯びている。


まるで全身が心臓のように脈打つ。



「はあ、はあ、はあ…………」


目の前には水野くん。


息を荒げて、うなだれる。



「……はあ、山田さん、どうして――」


彼が顔を上げた瞬間に


つかまれた手首から全身へ悪寒が走った。


「あ……嫌っ!!」

目の前の彼に

いつぞやかの恐怖のシルエットが重なる。


思いっきり手首をふって放されたのがわかると


すとんと力が抜けて地面にしりもちをついた。



私は思わず目を瞑り手で両耳をふさぐ。



やめて、早く消えて、

思い出したくないっっ!!