廊下から話声が聞こえる。
「でも実はその名前が似ているのを使ったトリックだとは……」
目の前で水野くんが話しているのに、
私は、なんでだろう、
その廊下から聴こえてくる声に耳を奪われてしまった。
ドアに手をかけるその些細な音まで拾って、
その時机に乗っていた自分の手のひらに力が入ったのがわかった。
「……山田さ「じゃあねっ、稜佑!」
「おうー、またねー」
水野くんがきっと変な顔をしているであろう私に
話しかけようとしてくれて、
それは教室のドアの開く音と会話で遮られた。
「……あれ、香乃子ちゃん?……と、水野?」
放課後、女の子とどこかをほっつき歩いていたらしい奴が
不思議そうな顔で私たちを交互に見た。
私たちは2人共黙って、どかどかとこっちに来る奴の動きを見ていた。
「何、してんの?」
なぜか少しぎこちない奴なんて気にせず、
「勉強会、見ればわかんでしょ」
なんて言った後に、
私の目の前のまっ更なノートを見てしまったと思った。
「え、嘘だろ」
といって、私の横から手を伸ばし、そのノートを指さした。
稜佑の胸が私の耳に当たる。
コイツの香りと至近距離で聞く声にくらっとする。


