「なっ……!何言ってんの!?」

とその手から逃げるように後ずさる。

「私もそう思っちゃったよ」

なんて、天使のような笑みで紗依ちゃんに言われると

すごく恥ずかしいけど嬉しい。


「……稜佑、山田さん近いの嫌がってんだろ」

そう言って伊東くんが飲み終わったらしい缶を自販機の横のゴミ箱に捨てると

急に稜佑のシャツの首元を後ろから掴む。

「長々とごめんね。

おやすみなさい」

稜佑とはまた違った整い方をしてるその優しそうな表情で

「えっ、ちょっ、佐月!!?」

と暴れる稜佑を引きずりながら

歩きだす。


「明日なー!おやすみー!」

と連れて行かれながら子供みたいな笑顔で手を振っていた稜佑を、

彼らが見えなくなってから紗依ちゃんと2人で笑ってしまった。


「桃井くんって私が思ってたほど嫌な人じゃないような気がしてきちゃった。

香乃子ちゃんのこと、大切に思ってるんだよね、きっと」

え?私のことを大切に思ってる?

「そんなわけないじゃん!稜佑は面白がってるんだよ!」

思いっきり否定すると

「桃井くん、呼び捨てで呼ばれてて仲良さそうでいいなー」

と可愛い顔で拗ねられてしまった。


確かに、色々あって気にかけるのも忘れてたせいで

お互いもう人前で名前で呼び合ってしまっていた。


そういえば、紗依ちゃんも部屋にいる2人のことも私ちゃん付けで呼んでるんだ。


「……じゃあ紗依って呼んでもいいかな?」

私がそういうと紗依ちゃんは嬉しそうに頷いた。


呼び捨てで呼ばせてもらうのって、奴からは頼まれたから例外として、

なんかもっと仲良くなれたみたいで嬉しい!

部屋に戻ったら、2人にもそのまま呼んでいいか聞いてみようかな。


その後すぐに紗依と自分たちと頼まれてた飲み物を買って部屋に戻った。


私は呼び捨てにする許可をもらって、

さらに伊東くんに会ったというと茜に羨ましがられ、

そんな感じで楽しく会話をして、

今日が終わった。


怪我とかしちゃったけど、

それ以上に楽しいことがあって嬉しかったな。

そんな思いで私はその日眠りについた。