「ギャップ萌えって?」

状況のわかってない紗依ちゃんに

恥ずかしいけどなんとなく説明する。

「け、今朝、稜佑が、

普段知っている人の意外な一面とか見てドキっとしたらそうだって言ってて!

……な、なんか髪降りてるからいつもよりこう真面目な感じがしたというかなんというか!!」

「要するにときめいちゃったんでしょ?」

私の言葉に間をあけず付け足す稜佑を睨むと

「山田さん、稜佑の言うことはアテにしなくていいからね」

なんて伊東くんに優しく諭されてしまった。


「香乃子ちゃんも佐月も心外だなー!

俺はいつでも真面目っすよ?」

なんていって稜佑が私を見たかと思うと

こっちに手が伸びてきて、よく状況のわからないまま

ふっとかけていたメガネがとられてしまった。


「あっ……ちょっと!!」


私の焦りも知らずに

稜佑はメガネをかけながら

「ほら、メガネも似合っちゃう罪な男ですよ……」

なんて自慢げに笑っている。

「そう?そうでもないけど?」

本当はかなり似合ってるけど、

悔しいから嘘をつく。


紗依ちゃんは素直に褒めちゃったりするのかな、なんて思って彼女の方を見ると、

びっくりした顔で私を見ている。

「……どうしたの?」

私が紗依ちゃんに話しかけると

「香乃子ちゃん、桃井くんの顔見えるの?」

あ、しまった。と思ったのも遅くて、

隣でも声が上がる。


「香乃子ちゃん!これダテメじゃん!」


私は焦って20センチ以上も高いだろう稜佑の顔から背伸びしてメガネをぶん取る。


「あ、いや、ちょっと事情があって!!

……あは、ははー」

苦しい言い訳をすると

「事情って!?」

稜佑が食いついてくる。

ですよねー、この男がスルーしてくれるはずないですよね。


本音はここでは言いたくなくてどうしようか迷ってると

「それぞれ事情があるんだよ。

お前だって言いたくないことくらいあんだろ」

伊東くんのフォローが入った。


私は神でも見つけてしまったのかという思いで彼を見ると

少し笑いかけてくれて、稜佑の頭にチョップしていた。

紗依ちゃんも深く突っ込まずにその彼らの様子を見て笑い、

何事もなかったかのようにしてくれた。

この2人はなんて優しいんだ!!


「へいへい」

なんて、伊東くんに注意されて少し拗ねてた稜佑だけど、

急に私の方を向き直すと

「まあどんな事情あんのか知らないけどさ、」

と真剣な表情になり、

「香乃子ちゃん、メガネない方がすっげぇ可愛いよ」

と私の両肩に手をぽんと置いた。