「それに……」
それに、この間気づいたことがある。
「稜佑だって私のことみんなの前じゃ苗字で呼ぶでしょ」
隣に座ると脚の長さもさながら、
腰からの座高も私よりもずっと高いことがわかる。
そんな彼の顔を見上げながら
この間ふと気づいたことを口にすると
稜佑はかたまったように
私を見下ろして動かない。
「……?」
顔に何か着いてるのかと思い
手を動かそうとした時
バスが走り出す。
「うひゃっ」
発車の振動でシードベルトを締め忘れてた私の体は今顔を向けていた方によろけ、
未だかたまっていた稜佑の肩へ私の額がぶつかる。
「……痛ぁー」
起き上がってぶつけた額をさすると
目の前に真っ赤な顔の稜佑がうつる。
「は?どうしたの?」
車酔いでももうしちゃったのか、
私は彼の目の前で手をひらひらーとふると
はっとしたように目をぱちっとさせた。
「……あ、いや、香乃子ちゃん
いつも俺に名前呼んでもらいたかったのかなー?って」
すぐにいつもの余裕そうな表情に戻ると今度は私の顔を覗き込んでくる。
その動作に近いことへの気持ち悪さからか心臓が早くなるのを感じると、
「そんなわけないじゃん!」
とそっぽを向く。
すると手がのびてきて、
私の額にそれがあたる。
「おでこ、大丈夫だった?」
かけられた言葉にびっくりして稜佑を見ると
少し心配そうに私を見つめていて
いつもはしないその表情に私の心臓はまだうるさいままだ。


