横須賀基地の敷地内を出て、新兵達は晴の捜索を開始する。

とはいえ、アテがある訳でもない。

訓練を積んだ兵士とはいえ、人間の足だ。

基地からそう遠くへは行っていない筈だが…。

「ねぇ…綾斗君」

綾斗と並んで夜道を歩いていた奈々が、俯き加減に言う。

「笑わないでね?」

「何がだ?」

「……」

奈々は言いにくそうに口にする。

「さっき時雨教官が、『この機に乗じて自分も脱走しようとするな』って言ってたじゃない?…私、見透かされたような気がしちゃってさ…」

長いツインテールが、不安げに揺れた。

「…別に恥ずかしい事じゃない」

奈々の言葉に、綾斗は穏やかな口調で返す。

…ぎゅっと握り拳を作る。

昼間の戦闘。

もしキレていなければ、冷静な状態だったならば、もしかしたら綾斗も臆病風に吹かれていたかもしれない。

目の前で人が死ぬ。

AOKが人間を殺していく。

その光景に震え上がり、敵前逃亡していたかもしれないのだ。

「晴も奈々も…まともな人間だって事さ…胸を張っていい」

そう言って綾斗は奈々の肩をポンと叩いた。