alternative

新兵同士で交流を深めているうちに。

「貴様ら!準備が出来たのなら迅速に行動しないか!」

時雨の怒号が飛ぶ。

「やべっ」

慌てて走り出す皓。

他の者達も後に続く。

「……」

その姿を、時雨は黙って見守っていた。

この訓練分隊で、綾斗の秘密を知っていたのは時雨だけ。

彼女は敢えて他の者達に事実を告げる事なく、綾斗自らの判断に任せていたのだが…。

(どうやら無事告白を終えたようだな)

時雨はその事に密かに安堵すら覚える。

女である事を軽視される事を嫌って男装していた綾斗。

だが過酷な訓練を共にし、絆を深める事で、そんな性別の差などつまらない事だと知るようになる。

性別や年齢の差よりも、大切な事が部隊にはある。

そしてそれが理解出来てきた時、自然と真実を告げられるようになるだろう。

時雨はそれを待っていたのだ。