alternative

しかし。

「馬鹿者!」

首から上以外を、爪先から指先まで完全に覆う構造の黒いボディスーツを身に纏った一人の女性兵士が、自動小銃を乱射しながら割って入ってきた。

切れ長の目に背中まで届くポニーテールの黒髪、透き通るように白い肌。

とても兵士には見えない美貌の持ち主だった。

時雨・テスタロッサ・タチバナ。

この2年前に国連軍に入隊したばかりの兵士だった。

彼女は銃撃でAOKの気を逸らしながら、泣きじゃくる綾に向かって叫ぶ。

「逃げろ!」

「……っ!」

綾はグッと歯噛みする。

親友を殺された。

目の前で七瀬を殺されたのだ。

それなのに、逃げる?

「悔しいか!」

時雨は綾をキッと睨んだ。

「悔しければその思いを兵士となってAOKに叩き付けろ!」