alternative

目の前のマザーは、既に白い体躯が真紅に染まっている。

彼女もまた、時雨分隊によって追い詰められつつあった。

あともう少しで、その巨体が沈むかもしれないのだ。

確実に勝機は訪れつつある。

なのに、時雨分隊の誰にも、次のマザーの攻撃を受け止めるだけの体力が残っていない。

誰が攻撃を受けても、死と引き替えになってしまうだろう。

「私が受け止めるよ…っ」

奈々が前に出る。

「馬鹿っ、何言ってんだ!」

晴が彼女の腕を掴む。

その拍子に折れた腕に痛みが走り、晴は顔を顰めた。

「晴君っ、無理しないで!腕使えなくなっちゃう…っ」

「奈々こそ下がれ。その吐血…内臓に異常があるかもしれないぞ」

奈々の体を気遣う晴に、彼女は首を振って見せた。

「私はいいの…私は時雨分隊で一番弱いもの…私が生き残ったって、マザーを倒す戦力にはなれない…強い晴君や綾斗君達が生き残った方が…」

「何言うんだ!」

ラルフが、綾斗が。

奈々の言葉に憤る。

命の価値に差などない。

誰が生き残っていい、誰が死んでいいなどという事は絶対にないのだ。