alternative

米内が静かに手術室の方を見る。

「あの体だ…時雨少佐は最早戦う事は出来ん。勿論傷痍軍人として、出来る限りの事はしてやるつもりだが…困るのは諸君らの方だ。分隊に有能な指揮官がいなくなる事になる」

確かに、時雨が分隊から抜ければ分隊長不在の状態になる。

部隊の行動、有事の判断において、隊長というのは絶対に必要だ。

だが時雨は、もう戦場に立つ事はできないだろう。

「でしたら」

ラルフが言う。

「俺が時雨教官…いえ、時雨少佐の後を引き継ぐ訳にはいきませんでしょうか?」

少尉という階級は、主に中隊付幹部、小隊長などに充てられる。

小隊とは分隊より上位に置かれる部隊をいい、概ね2個から4個の分隊で編成され、30人から50人程度の兵員を有する。

つまり少尉であるならば、分隊クラスの隊長を務めるには十分すぎるほどの階級なのだ。

「俺はこの分隊の中で最年長です。まだ歳若い彼らを率いるのは、僭越ながら俺が適任かと」

「…君は、名前は何という?」

米内の問いかけに、ラルフは敬礼する。

「申し遅れました。第207訓練分隊所属、ラルフ・ハミルトン訓練兵であります」