「どうなるんだろうな、時雨教官」

皓は流石に男だ。

歳若いが人前で涙を見せるのは、彼のプライドが許さない。

微かに涙声になるのを堪え、誰にともなく呟く。

「もう戦闘は無理だろうな…下半身が丸ごと失われたんだ…何よりもう彼女は、戦う事から解放してやりたい…彼女は兵士である前に女性なんだ…あんな体になってまで戦う事はない」

ラルフが静かな声で言った。

「同感だよ…強い人だ…誰にも悟られる事なく、ずっと一人で抱え込んでいたんだな…」

晴もまた、溜息混じりに呟く。

その時だった。

「君達か。時雨の教え子というのは…」

一人の老齢の佐官が廊下を歩いてきた。

カッチリと軍服を着こなしたその姿は、かなり上の階級である事を連想させる。

その威厳ある雰囲気だけで、隊員達は条件反射で敬礼をしてしまったほどだ。

それに敬礼で返した後。

「初めてお目にかかるな…国連軍極東支部横須賀基地司令、米内 雅光(よない まさみつ)大佐だ」