やがて『手術中』のランプが点灯する。

隊員達は長椅子に座り、ただ無言のまま手術が終わるのを待つ。

綾斗も、皓も、奈々も、晴も、ラルフも。

皆一様に表情は暗い。

知らなかった。

時雨がただ一人、そんな重い過去を背負っていたとは。

自分は狂気の実験の犠牲者となり、まともな肉体さえ失ってしまったというのに、それを億尾にも出さず、ひたすらに隊員達の育成に全力を傾けた。

自分と同じ無惨な末路を歩ませない。

己が絶望の真っ只中に叩き落とされたにもかかわらず、尚新兵達の為に尽力した。

「時雨教官…」

奈々が耐え切れず、顔を伏せて嗚咽した。

「泣くなよ…奈々…お前…泣くなんてずるいぞ…」

いつも男装して、男性兵士よりも強気な態度を見せる綾斗まで、奈々につられてジワリと涙を滲ませた。

「綾斗」

晴が彼女の頭をクシャクシャと撫でる。

「お前は女の子なんだ…恥ずかしい事じゃない。泣きたい時は泣けばいい」

彼のその言葉があまりにも優しくて、切なくて…。

綾斗もまた、人目を憚らず奈々と抱き合って泣いた。