alternative

生きていてくれたのは嬉しい。

それは当然だ。

だが…こんな傷を負って何故生きていられるのか。

最早人間の生命活動を続けられるレベルの傷ではない筈だ。

「ふふ…」

喀血しながら時雨が笑う。

「私はもう…人間ではないからな…」

自嘲するように語る時雨。

…話は二年前に遡る。

2008年のAOK本土上陸。

当時時雨は訓練分隊の曹長として、AOK侵攻阻止の任務に当たっていた。

完全抗体の持ち主だった彼女は、危険な最前線でAOKの足止めを任せられる。

まだ10式近接戦闘用軍刀などなかった頃だ。

完全にAOKのとどめを刺す事ができず、幾度となく再生するAOKに部隊は苦戦を強いられ、時雨もまたその犠牲となった。

致命傷。

心停止状態にまで陥り、搬送された軍の病院で死亡判定を下される。

そこで時雨・テスタロッサ・タチバナの人生は終わる筈だった。

「しかしな…軍の中には完全抗体に非常に興味を持つ者がいたのだ…彼らはこう考えた…『AOKの分泌物にも拒否反応を示さない肉体。ならばAOKの臓器を移植すればどうなるのだろう』とな…」