まさか…。

青ざめた顔でラルフが振り向く。

そこにあったのは。

「ぐ…ふっ…!」

鋭い尾の尖端で腹を、胸を貫通され、AOKに群がられている時雨の姿だった。

「う…うあぁあぁぁあぁあぁっ!」

ラルフが、奈々が、晴が。

その光景に気も狂わんばかりの悲鳴を上げる。

「時雨教官っっ!!」

「てめぇらぁぁあぁっ!!」

綾斗と皓が抜刀し、ヘリの中から飛び出してくる!

しかし。

「うろたえるな、見苦しい!」

信じ難い事に、時雨は自らの体を貫く尾を軍刀で断ち、尚且つ群がるAOK達を斬り散らす!

「ば、馬鹿な…」

ラルフ達は愕然とするしかない。

体を貫通していたのだ。

普通の人間ならば致命傷だ。

鍛え込んでいるからとか、そういうレベルの怪我ではない筈だ。

にもかかわらず時雨はたった一人で追っ手のAOKを蹴散らし、ヘリに乗り込む。

「ぐっ…て、撤退だ!」

出血が酷い。

痛みも感じているようだ。

それでもその重傷で意識を失う事すらなく、彼女は撤退命令を出した。




『不死身の時雨』

分隊の訓練兵達は、彼女の異名の意味を、その目で確認する事となったのである…。