麻緋は歌いたいんだ。
「……母さんは、麻緋のこと、なにもわかってないよ」
「あんたは分かってるって言うの?」
「母さんよりは分かってるつもりだよ」
少なくとも、あんたよりはね。
何年も何十年も母さんよりも麻緋の近くにいたつもりだよ。
麻緋のしたいことも望みもわかってる。
「麻緋は、歌が大好きなんだ。
歌うことが大好きで、心の底から楽しんでるんだ。
母さんが将来の保障が欲しいっていうなら、俺が保障してやる。
麻緋は、あいつは近い将来、絶対にプロになる。
あいつはプロになれるんだよ。
だから、今、できることは音楽を勉強させて可能性を広げてやることなんだ。
今よりももっと力をつけさせることなんだ」
「蒼、あの子は普通の子なのよ?私とお父さんの子なの。
そんな平凡で普通な子がプロになれるわけないわ。それは家族の欲目じゃない?」


