『天才ピアニスト“栗原雅紀”』
結局、雅紀君は私を追いかけて来てはくれなかった。
分かってた。
分かってたし、傷もついていない。
むしろ、雅紀くんには感謝さえしてる。
私に音楽の素晴らしさを教えてくれてありがとうって。
その雅紀くんが、海外でピアノの賞を獲ったという。
「すごいなぁ」
でかでかと八重歯を覗かせた笑顔。
トロフィーを持った黒のタキシード姿。
中学の頃はサッカーもしてたから肌が黒かったけど、今は真っ白だ。
雅紀くんは凄い。
実力がある。
中学生で海外に行こうとする力強い意志がある。
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