もしも愛が嘘ならば



先生が出て行った病室に、静かな空気が流れた。



『正直に言えばね、怖かったの』


「…っ…はい」


『梓ちゃんの親の権力も、命の保障も。…全部怖かった』



イスに座っているわたしの前に、膝をついて。

同じ高さで話をする看護師。


…それだけで、胸が熱くなる。


『だから、担当医が変わるときに、わたしも梓ちゃんから離れたの』


「…ん…っ」


涙が邪魔をして、うまく返事ができない。

呼吸が苦しくて。


でも、それは嫌ではなかった。