――――… いつかの記憶。 『具合悪いの?』 「あ…いえ」 ベンチで俯くわたしに、声をかけてきた男の人。 その日は、お父さんに婚約者を告げられた日。 海堂くんに会った日だった。 『梓、おはよ』 上から響く低い声。 「うがっ!…ビックリしたぁ」 時計を見ると、朝の9時。 「先生って9時が好きなの?」