「志保~、くちびるが乾くんだけど」






と言いながら、彼氏が自分のくちびるを指さした。







「はぁ?」





リップクリームを手に、何言ってんの? という顔で見る。






「だから、くちびるが乾くの」




ツンツンとくちびるをさす彼氏は、リップクリームを塗れ、と遠まわしに行動で伝えようとするが、そんな態度に、




「塗ってあげる」、「使って」と言う気にもなれなくて、出た一言が、





「乾いたままにしておけば?」


 だった。







「くちびる乾くんだよ。意味わかる?」





 依然くちびるをアピールし続けるが、あたしは知らん顔。



「だ・か・ら、それがどうしたの?」




気にせずリップクリームをくちびるに塗っていると、



「もーいいよ」
 



彼氏はため息をついてそういうと、
















ちゅっ……

 




あたしの口にキスをした。




目を瞬かせるあたしに、






「くちびる潤った」




とにんまり顔で彼氏が言う。





「~~っ、バカ!」





怒るあたしの顔は真っ赤だった。





【完】