「ああ、あの子達は美由紀が私と結婚したいために、
にわかにかき集められた子供たちだよ。」
ええー… その信秀の言葉。
にわかには話が理解出来ないリュウと水嶋、
顔を見合わせ信秀を見ている。
「おじさん、言っている意味が良く分かりません。
かき集めって、どういうことです。」
「父さん、しんどいの。」
リュウに至っては、父の思考回路が壊れた、と思ったぐらいだ。
「美由紀は私に良くしてくれた。
だけど、何故か彼女には冷たい影が宿っていた。
口では上手く言えないが…
何か、隠し事があるような…
まあ、戸籍の事を考えても、
何もないと言う方がおかしいのだが…
子供たちと初めて会った時、
二人は異様に怯えていた。
こういっては何だが、
私は人から恐れられたことは一度もない。
龍彦のことで小学校の関係者と話し合った時、
初めて感情を露わにしたが、
それ以外では…
大抵は、ひょうひょうとした、
温かい空気の中で暮らしている、いい人、
と見なされて来たんだよ。
ああ、龍彦を連れてどこかへ行っても、
近くに寄ってきた子供たちに怖がられたりした事は一度もなかった。
それなのに、彼女たちの様子は不可解だった。」
「新しいお父さんが嫌、と言う風には思わなかったのですか。」
水嶋が必死に理解しようとしている。
「いや、思わなかった。
美由紀の前ではきちんと挨拶をして、
私になつっこく話してきた。
だけど美由紀の姿が消えると…
かなり不自然な態度だった。
後で聞いたことだが、
私に好かれなければ、どこかに売られる、と脅されていたらしい。」
売られる… 思わず2人は顔を見合わせた。
「どういうことですか。よく分かりません。」
今の日本で、どこかに売られるなんて…

