ダークエンジェル


そして2日後、
リュウがいつものように朝食後、
父の手をもみ、足をマッサージしていると… 

気のせいか、
放した父の手が微かに動いたような気がした。

中指辺りが、ほんの少しだが動いた。



「父さん。」



リュウは慌てて父の手を握り締めた。

そして慌てて、枕元に付けられている緊急用のブザーを押した。



「どうかしましたか。」



看護師が駆け込んできた。



「父さんが… 」



リュウはそう言って、握っていた手を看護師に見せた。

確かに指が動いた。

もう一人の看護師が呼吸や血圧などが分かる機械を凝視し、
興奮したような顔をしている。



「まだ如実には表われていないけど… 
確かにいつもとは違う気配がするわ。
先生に連絡しましょう。

リュウ君、そのままお父さんに刺激を与えて。」



父は微かだが変化を見せていた。

血圧も… 
この3ヶ月間、ほとんど30前後しかなかったが、

いつの間にか60近くになっている。

まだ完全に意識が戻っているわけではなかったが、

半開きの、焦点の無いまなざしながら、

ぼんやりとリュウを見ているように感じる。

いや、それはリュウがそう思うだけだったかも知れないが… 

確かに父の眼は、半開きのようだが開いている。



「父さん、父さん。」



リュウは父の右手を握りながら、

泣いているような声を出して叫んでいる。

興奮と感激で… 
父を呼ぶだけで精一杯だった。