とにかく、父の事故以来、
自分の知らない何かがうごめいているようで、
不安で堪らない。
「警察は、父さんと同じ60歳だから、
父さんがアメリカにいる間に、
何かトラブルを起こしたのかも知れないって、思っているようだった。
あ、だけど、その人はアメリカについてすぐ殺されたらしいから、
警察は毒チョコレートの事は、
被疑者死亡で決着をつけた。」
カイルの存在で… 落ち着いてきたリュウ、
それでもとにかく、カイルにいろいろ知らせたかった。
「それにね、父さんが狙われた。
犯人を見たけど… 逃げられちゃった。
やはり外国人だった。
アメリカ人なのかなあ。
僕、すぐ近くにいたのに…
父さんのベッドが倒され、
父さんの事しか頭になくて… 逃がしちゃったんだ。
だからそれ以後は、
こうしてベッドをこの部屋に運んでもらい、
一緒に寝ている。」
リュウは同じ母を持つ兄として、
カイルに心の中に巣食っていることを聞いてほしかった。
水嶋が心配してくれている事はよく分かっているが…
やはり、カイルしか思い浮かばない。
ずっと待っていた。
いつか来てくれるような気持がしていた。
「リュウ、詳しい事は後で必ず話す。
大丈夫、もう高倉さんは狙われない。
狙われたのは全て私のせいなのだ。
後で全て話して… 謝る。
それよりも、もっと足に刺激を与えるのだ。
あの機械には何も表われていないが、
私には高倉さんの神経が目覚めようとしているように思われる。
自由な右手も…
リュウの力で高倉さんを目覚めさせるのだ。
こうして指を一本一本絡めたり、
タオルで拭いてあげてもいいと思う。」
そんな事を言いながらカイルはベッドに近寄り、
リュウにやり方を見せるような仕草をしている。
どうしてそんな事を言うのか、
と言う様な顔をしているリュウだが、
何となく父が目覚めるような気持がして来た。

