そしてリュウは…
そんな態度は微塵も出さなかったが、
何故かカイルの顔が浮かんでいた。
そうなのだ。
カイルが兄、と分って以来、
何かとカイルの顔が浮かんできていた。
いつまでも意識の戻らない父。
その心細い状況下にいるリュウ。
他に頼る人のいないリュウにとって、
同じソフィアを母に持つカイルの存在は特別のものだった。
「実は… それで名前が分かったので調べたところ…
日本時間の今朝、
ニューヨークに到着する便に乗ったことが分かり、
現地の大使館へ連絡し、
ニューヨーク市警に協力してもらう形で到着を待ったのです。
はい、やはり、すぐ出国したと言う事も引っかかりましたので、
とにかく話を聞くつもりでした。
成り行き次第ではこちらから捜査員を派遣する事も考えていました。」
と、刑事たちも本来の話を、丁寧に始めている。
リュウは、そんな事を聞いても仕方がない、
と言う様な目つきをしている。
大体アメリカで生まれても、
一度も行ったことは無いし、
知らない人の話など無意味でしかない。
それでも刑事たちは一応最後まで話したいらしい。
「ところが… 飛行機が到着しても彼女の姿がなかったのです。
機内から出たのまでは確認されていましたから、
空港の警備員たちにも協力してもらい…
そうしたら、
ほとんど使われない端にあるトイレの中で死んでいたそうです。
ええ、あのチョコレートに使われた青酸カリだったようです。」
「チョコレートと同じ… 青酸カリ… 」

