ダークエンジェル


1人になったリュウは、
父の足をマッサージしながら
一日の事を報告している。

父が入院して… 3ヶ月がたった。

事故の怪我は既に完治しているが… 
相変わらず父は眠ったままだ。

こんな事がいつまで続くのだろう。

あの時、いきなり現われたカイル… 
その後は何も連絡がない。

アレは夢だったのだろうか。

しかし、あのチョコレート… 
あの毒は… 
僕を殺そうとしたのかも知れない。

カイルも別れ際に、
身辺に気をつけろ、とか言っていたが… 

命を狙われるような覚えはないもない。

義母たちの存在も不可解でしかないが… 
あれ以来、警察も何も言ってこない。

チョコレートの犯人も、見つかってはいない。


テニスの事を考えているときは、
そう言うことを意識しないようににしているが、

こうして、反応のない父を見ていると… 
不思議とカイルの顔が浮かび、
いろいろな事が思い出される。


が、その時ノックがして、
看護師が刑事を2人伴って現われた。



「ごめんなさいね、こんな時間に。
リュウ君、明日は大事な試合の日、って言ったのに、

この人たち、何か連絡したい事があるとかでひつっこくて… 
私もいましょうか。」


「いえ、大丈夫です。
有難うございました。」



この会話からも分かるように、

リュウは病院の看護師たちの間ではとても良い子に見られている。

実際悪い子ではないが、

担当の看護師以外からも特別に親切な眼差しを送られている。

だからリュウも、
特別に良い子を演じている。

今も… その看護師の親身なガード振りがうかがわれる。