ダークエンジェル


全国高校テニス大会。

初出場の曙高校だったが、
実力云々よりも
気運・気力が上昇していたのか、
波に乗った形で

シングルスのどちらかとダブルスの水嶋・リュウ組が毎回勝ち、

喜んでいる内にベスト4まで残ってしまった。



「お前たち、すごいじゃあないか。

うち以外は全て優勝経験校だぞ。
あと2戦だ。
このまま進めば優勝だって夢じゃあない。」



川田顧問が目じりを下げて… 
嬉しくて涙が出そうだ、と言う様な顔をしている。



「本当にすごいですよ。
やっぱり全国大会の雰囲気は特別だ。

先輩たちのお陰でこんな所にいる事が出来て… 
感激です。」



2年生と1年生の部員たちも興奮して、
叫ぶような声を出している。



「俺たちだけ1勝もしていない。
なんだか皆の足を引っ張っているようだ。」



と、橘と山根が気落ちした声を出した。



「そんな風に思うなよ。
お前たちだけがにわかパートナーを組んでいるんだし、

先生の計画で、
相手を油断させるための布石としてトップで出ている、
そんなことは皆知っているさ。

こういう大舞台ではそう言う策略も必要だ。

な、先生、そうだろ。」


「ああ、君たちは皆、頑張っている。

うちのような弱小クラブは余裕はないんだ。

君たちの他に誰が出れる。

まあ、3年間の総力を自分なりに出してくれ。

とにかく、こんな大舞台に出たのは学校創立以来初めての事。

他の部でも無かったことを今年のテニス部がやっているのだ。

余計な事を考えずに、
自分なりのベストを尽くせばいいんだ。」






そして準決勝も… 
その気運の流れで残ってしまった。



「なんか、夢を見ているような気持だ。」



選手自身がそんな言葉を出して… 

皆、翌日の決勝戦に心を馳せて帰途についている。


水嶋は相変わらずリュウと一緒に病院に寄り、

夕食を食べて家に帰った。