「リュウ、弱点をつかれたな。
僕がリベンジするよ。」
決勝戦まで残った山崎が、
つかれきった顔をして水分補給をしているリュウのところに来て、
一声かけてコートへ出た。
同じ高校でも、
山崎は所属するテニススクールのメンバーと一緒にいた。
が、ライバルでもあり、
親友のように感じているリュウに言葉をかけたかったようだ。
「おう、山崎、
リュウの代わりにお前、絶対に勝てよ。」
声を出す気も無いリュウに代わって、
リュウに付き添ってきている水嶋が山崎に声を返した。
応援に来ていた他の部員たちも、
シーズン直前で退部した山崎だったが、
最後の最後になれば…
リュウに代わって決勝戦を闘っている山崎を大声で応援した。
そして、1時間以上の試合の末、
決戦を制したのは山崎だった。
山崎はコートの上から
曙高校テニス部員がいる場所に向って一礼し、
所属するテニススクールが陣取っている応援席に向った。
「やっぱり、あのぐらいのスタミナは必要だなあ、リュウ。」
「いいよ。僕はプロになる気はないんだから。
テニスは… 楽しいからしているだけ。
さっきは… 完全な僕のミス。
自分の限界がよく分かった。
先輩、全国大会、頑張ろうね。」
「ああ、全国大会だから強豪揃いだろうが…
なんだか負ける気がしないな。
次からは俺と組むぞ。」
それまではシングルス・3、ダブルス・3、で出場していたが、
今年から全国大会は、
シングルス・2、ダブルス・2、となっていた。
それで、シングルスは吉野と天野、
ダブルスは水嶋・リュウ組と橘・山根組で出場する事にしていた。
要するに2年生はリュウ一人と言う事だ。

