「外国人で、言葉は英語しか話せなかったらしく、
店員にゆっくりと分かりやすい発音で接したようです。
だから店員も、
本来は一度持ち帰った品物、
口にするものですから、安易に包装をしなおすことはしないのですが、
外人さんが困っている、と思い、つい包装しなおしたようです。
毒が入っていた、と知って、今は大騒ぎになっています。
それで似顔絵つくりも協力的でした。
他の刑事が入国管理局や空港へ行っていますから何か分かるかも知れませんが… 」
と、刑事は状況を分かりやすく説明している。
「外国人か。
俺の知っている外人は日本語が達者で、
もっと若くてスマートなビジネスマンだけだ。
リュウもそんなところだろう。」
「カイルの事。」
「ああ、そうさ。
そう言えば、先週、またカイル、日本に来たぞ。
俺は会っていないが…
店に来て、お前の親父さんの事故を聞いて、驚いていたようだぞ。
だけど、とても忙しいらしく、すぐ帰ったって。」
と、自分たちの話になりそうだったが、
刑事と目が合った水嶋、
すぐにまじめな顔をしている。
「刑事さん、あのチョコレート、
全部毒が入っていたのか。」
「いや、検査の結果、上の数個だけ… 」
「そうか。じゃあ、他のはどうするんだ。
一応、リュウ、いや、高倉家への見舞いのものになるんだろ。」
その時の水嶋、
北村かおりの顔が浮かんでいたのだろう。
【アンダー・17】いなづま杯。
リュウはみんなの期待通りベスト4までは残ったが、
残っているのは山崎と同じようにプロを目指して
全国から集まってきている強豪揃い。
リュウは準決勝で最後までもつれ、
スタミナ不足から足運びが不安定になり、
自滅の形で終わった。

