「あれは警察に渡した。
どう考えても思い当たらないから…
でも、警察がもっているから言うよ。
その店に行けばどんな人が買ったか、分かるんだよね。」
リュウがかおりに確認した。
そう、さりげなく犯人の割り出しに繋げている。
「そうだな。
親父さんが起きるのを待つより、
警察に確認してもらったら良いな。
それが良い。
北村、どこの店か、教えてくれ。」
冷静さを取り戻した水嶋が、
落ち着いた態度でかおりに尋ねている。
「大通りの【フィール】と言う洋菓子屋。
いろいろな国のチョコレートがあることで有名らしいわよ。」
と言うことで、その情報を早速警察に知らせた。
水嶋の頭ではあくまでも犯人は自分たちを狙った誰か、
のはずだった。
リュウは、口には出さなかったが、
何故か、カイルの顔が浮かんでいた。
「リュウ、今日は見事だったぞ。
来週は【アンダー・17】、
3日間で決着がつく個人戦だ。
山崎はテニススクールから出場するらしい。
うちからはリュウ一人だが、
今日のゲーム運びをすれば優勝も夢ではない。
病院暮らしと言うのがちょっと気になるところだが、
とにかく体力を養っておいてくれ。
水嶋、リュウの事、気にかけてやってくれ。
他の者もその翌週からは都大会が始まるから、
時間がある者は応援に行き、
いろいろな選手の戦い方を見ておくのも勉強になるぞ。
何しろ、17歳以下で、
われこそは、と思っているものばかりが出場するのだからな。
山崎のようにプロを目指している高校生がかなり出場するらしい。」
顧問の川田教諭もこのように晴れがましい事は初めての体験、
とても良い顔をして皆に話している。

