「リュウ、これなら完璧だ。
ここからなら学校も近い。
明日からクラブもやるぞ。
弁当は俺が持って来てやる。
その代わり、試合、頑張るぞ。
俺たちの夢、忘れるなよ。」
幸いな事に、その病院は水嶋の家と学校との中間にあった。
そう、歩いていける距離に学校があった。
リュウは毎日、起きると眠っている父に話しかけ、
出かける前にはしっかりと手を握って部屋を出ている。
そしてクラブが終わって帰ると大体6時から7時。
一番に父に話しかけ、
それからすべき事をして眠くなると寝る、と言う生活をしている。
毎日医者や看護師の往診はあるが、
ほとんどリュウが学校へ行っている間のこと。
変わったことがあればすぐ知らせてくれることになっている。
家政婦は朝の6時から夜7時まで。
リュウの朝食と夕食、洗濯などをしてくれている。
考えてみれば、
父が目を覚まさないのは悲しく、心細い事だが、
父と一緒の生活、と思えば悪いものではなかった。
あれ以来、警察は何も言って来ない。
トラックが乗り捨てられていた、と言う事はあの直後に聞いたが…
運転手は無理だったようだ。
水嶋も3年生。
いつまでも毎晩11時までリュウのところにいるわけにも行かず、
最近は、帰りに一緒に病院により、
シャワーを浴び、
一緒に夕食を食べて、
1時間ほど話をして帰っている。
夕食は、昼食の弁当のお返しだ。
家政婦の野村さんも
一人分の夕食より水嶋がいたほうが作り甲斐がありそうだ。
そんな生活が始まって2ヶ月後。
ある夜、リュウが気配を感じて
父の部屋をのぞいた時だった。
そこに一人の男が…
薄暗い電灯しかない部屋だったから顔までははっきりしなかったが…
誰かが父の足元で何かをしていた。

