「ええ、実は、その事故の前に、
直前、と言っても良いぐらいですが、
事故現場に一番近い交番に、
怪しいトラックが止まっている。
何とかしてくれ、と言う苦情が入ったのです。
ところが見に行こうとしていた矢先に、
その事故が起こり…
勿論巡査はすぐ所轄に連絡をいれました。」
「と言う事は、
そのトラックの運転手は初めから高倉さんたちを狙っていた可能性があり、
誰かがそのことを知って、
交番巡査に止めてもらおうとした、ということですか。」
水嶋が再確認の言葉を出した。
「ええ、まあ、その可能性も視野に入れています。」
「父さんは人に恨まれるような事は無い。
今日、北海道の学会から戻ったところだったんだ。」
いきなりリュウが警察官を睨むような顔をして叫んだ。
目には涙が浮かんでいる。
「リュウ、今晩、ここで眠るのか。」
「うん。父さんのいるところが僕の居場所だよ。」
「そうか。じゃあ、病院の人に言って来る。
同じ部屋にベッドでも頼むよ。
ああ、お前がいればすぐ親父さんも意識が戻るさ。
親戚の人に連絡しなくて良いのか。」
「親戚… おじいちゃんが死んだから
父さん、しばらくアメリカで暮らしたんだ。
父さんは一人っ子だったから、
親戚なんていないよ。
あの家の仏壇にいるだけ。」
「そうか。じゃあ、義母さんの親戚は。」
「知らない。
興味なかったから聞かなかった。
父さん、何も言わなかった。」
「だけど、付き合いぐらいしなかったのか。」
「僕は知らない。」
リュウは本当に何も感じなかったようだが、
しっかり親戚付き合いをしている水嶋にとっては
不思議なようにも思われた。

