が、ナイフの男がリュウを狙い、
それをかわして、
難なく男の手を蹴り払った時だった。
「おまわりさん、こっち、こっち。」
と言う声と共に二人の巡査の姿が見えた。
いくら人気のない路地だと言っても、
まだ陽も落ちていない昼下がり、
誰かは気づくものだ。
現にリュウも気づいた。
そして男たちは…
その声で慌てて姿を消してしまった。
もうろうとしている、ラケットを持っていた男を
抱えるようにして…
逃げ足は速かった。
あとには蹴り落とされたナイフが所在無さげに転がっている。
それから二人は巡査に訳を話し、
通報してくれた通行人に礼を言った。
「いや… 実は外人さんが気づいて、
ポリスを、っていう感じだったから。
でも、巡査が駆けつけた頃にはその人の姿が消えていたんだよ。
パリッとしたビジネスマン風だったから、
時間がなかったかもしれないですね。」
と言って、その人も行ってしまった。
「僕の通っているスクールがあの明治神宮の裏にあるんだ。
今から行くところだったけど…
ちょっと話そうか。
何か食べるかい。
お礼におごらせてもらうよ。」
二人だけになった時、
山崎はそんな事を言って
リュウを目に付いたカフエに誘った。
昼食としては水嶋が持って来てくれた握り飯弁当を食べたが、
そこは育ち盛りの高校生。
席に着くと、
リュウは遠慮なくパスタのセットを注文した。

