「父さん、何を言っているのだ。
父さんはまだ60じゃあないか。
父さんがそんな事を考えているから、
リュウは父さんが退職に追い込まれて悩んでいる、
なんて事まで考える。
健史は気の良い奴だ。
私もリュウが彼を気に入ってくれて嬉しい。
父さん、リュウはアレで良いですよ。
確かに晩生なところは多分にありますけど、
リュウと話すと心が和らぐ。
リュウの気持が真っ直ぐだからです。
私はやっと会えた父さんとリュウの3人で人生を楽しむつもりですから、
つまらない事を言わないでください。
それにさっきも言ったとおり、
父さんは私を見ていてくれなければ…
私がソフィアの子で父さんとリュウの家族でいられるように、
父さんは気が抜けないのですよ。
あ、いけない、長話になってしまいました。
部屋の外でリュウがやきもきしている事でしょう。
これで切ります。
父さん、本当に有難う。
こんど会う時は、国体の応援ですね。」
そう言って電話は終わった。
「龍彦、お茶、遅かったなあ。
もうカイルは切ってしまったぞ。」
「カイルは忙しいんだから当たり前さ。
ふーん、父さん、カイルと話して気分が変わったみたいだね。
いつもの父さんに戻っている。
何を話したの。」
リュウは2人の話は聞いていないが、
とにかく父の様子が変わったことで安心した。
「龍彦、お前、私が大学をクビになったと心配していたのか。
カイルが笑っておった。
私が大学をクビになったらカイルの会社で面倒を見てくれるそうだ。」
「だめだよ、父さん。
父さんはここで僕と暮らすんだ。
カイルは時間が空いた時だけここに来る。
それが僕たち家族の流儀だよ。
ここが僕たちの家だからね。」
カイルの事は大好きだが、
あくまでも自分たちの家はここ。
カイルが住んでいるアメリカは… カイルの職場。
一緒に住むとしたらここしかない。
リュウの頭の中ではそうなっていた。

