カイルは、
さすがに社会を動かすような立場にいるからか、
事態を正確に把握しようとしている。
そう言えば…
カイルと話した後、
父さんの様子がおかしかった。
あの事は父さんの気転でカイルに連絡して、
向こうで言えば、
その日の内に真相が分り、
解決したのだから喜べば良いのに…
そうだ、アレから何か考え事をするようになった。
電車の中でも、
僕は新宿で降りたが、
ドリーがいたのに、
父さんはほとんど話をしなかった。
リュウは思いついたことを全て、カイルに話した。
60歳になっているから退職を勧告されたのかも知れない。
今までは父さんに限って… と思っていたが。
父さんは国文学が好きだから、
それでショックを感じているのかも知れない。
などと、今までは考えたこともなかったことまでカイルに伝えた。
「分った。私が話してみるよ。
このまま父さんのところへ行ってくれ。
だけど、父さんだってリュウがいると話しにくいかも知れない。
携帯を渡したら、
お茶を入れてくる,とか言って部屋から出ていてくれ。
父さんだって親としてのプライドがあるかも知れないからな。
私は遠くにいる息子だから、
かえって話しやすいと思う。
リュウには後で教える。
それで良いかい。」
「うん、分った。
ありがとう、カイル。
貴重な時間を… 本当にごめんなさい。」
「馬鹿だなあ。
リュウが父さんの事を心配しているのだから、
私だって心配しても、当たり前だろ。
確か父さんは、この前、私の事も、
16年間子供と思っていた、と言ってくれた。
忘れたのか。」
「忘れてはいないけど…
カイルはすごく忙しい人なんでしょ。」
「ああ、ビジネスマンは忙しいものさ。
だけど、私の中での優先順位はリュウが一番。
リュウが泣いていると思えばどこにでも行く。
それがカイルだよ。
忘れないで。」

