「父さん、久しぶりだったから疲れたの。」
リュウは父の様子を家政婦さんから聞き、
その心配の心を、
夕食のテーブルに座った時、ぶつけてみた。
昨日は、邪魔者がいたが、
父は穏やかだが雄弁だった。
そして今朝で、
悩みの種は消えた、はずだった。
それなのに、何故こんな顔をしているんだろう。
「父さん、何でも話してよ。
何か心配事でもあるの。
父さんは3ヶ月も眠っていた。
その間、どれだけ心配していたか。
それでもカイルの事を知り、
退院してすぐにアメリカまで行き、
ずっとカイルを支えてきた。
父さんはすごい、って思う。
それなのに、どうしてそんな顔をしているの。
なんだか悲しそうだよ。
大学で何かあったの。」
そんな事を言いながらリュウのほうが悲しくなってきた。
父はカイルや自分の心を見抜くような深い愛情の目を持っている。
自分は好きだ、大好きだ、と思っても、
こんな顔をしている父の心が全く分らない。
その夜、父は、
やはり疲れたようだ、と言って、
リュウの心配を他所に、
部屋に入ってしまった。
疲れた、と言われれば、
無理に引き止めるわけにも行かず、
リュウは消化不良のまま、自分の部屋に戻っている。
しかし、考えてみれば…
父があんな顔をしたのは見たことがない。
父の心に何が巣食っているのだろう。
もう自分たちの家族にとって何も気にする事など無いはずだ。
カイルの存在を知り、
あんなに喜んでいたところと言うのに。
リュウは父の事が全く分らなくなり…
心細くてたまらない気持に襲われている。
何も手につかないまま、
机の上に両肘をつき、
拳を握った手を軽くぶつけ合っていた。
そしていつの間にか携帯を手にしていた。
ニューヨークから戻ったばかりと言うのに、
もう何度もカイルに電話をしている。
リュウも子供ではないから、
それがどういうことなのか分っている。

