あぁーー、と俺は悟った。 お前は、『そっち側』なのだ、と。 俺は遠い目でその文庫本を一瞥したあと、元どおりに机の中に教科書類と押し込んだ。 机を元の位置に戻すと、春風が入り込んでくる窓辺に近付いた。 校門へと続く中庭を足早に帰る聡の後ろ姿を見つけた。 俺はこの時、真面目そうだと思っていた聡ーー平野 聡(ひらの さとし)と深く関わることになるとは、全く思ってもいなかった。 ーーーーー ーー