あたしの学校の音楽室は、ホームルーム教室がある本館とは別に“特別棟”という離れの校舎の最上階に位置する。


階段を上りながら思わず悪態をつく。

「もう、何で音楽室が四階にあるんだよっ」


昼休みだからこの棟にはあまり人気がないとみえて、吹き抜けの階段にあたしの荒い息づかいと声が響く。


最後の一段を上りきって角を曲がると、廊下の先に重い防音タイプのドアが目に入る。


中に入ると、もう颯太が来ていたのが分かった。

グランドピアノの椅子に腰掛けて少し俯き、鍵盤を触っていた。


ちょっとグッとくるものがあった。うん。

長身で余分な肉が一切ないと判る身体にブレザー。

少し長めの前髪が目を隠しているのもまた良い。


これでピアノまで弾けたらもうなんかすごいや。



「あ、来たね。ご飯食べる?それとも俺のリサイタル開く?」

あ、弾けるんだすごいや。


「ははっ、そんな顔しないでよ。はいはい、ご飯食べようか。」



颯太はグランドピアノが置いてあるステージから降りると、手近な席についた。


「失礼します…」

あたしは颯太の様子を伺いながら隣の席の椅子を引く。