話しながら歩いていたら、いつのまにか昇降口に着いていた。
「あ、じゃあ失礼しまーす。」
こっちゃんが笑いながら言うけど、名残惜しいって思ってるのが丸わかりの顔だ。
「あ、じゃあ…」
あたしもこっちゃんに続いて颯太と離れようと脚を踏み出した。
「待って。」
ぐい、と後ろ手に引かれて身体のバランスを崩しかける。
「わ…」
「昼休み、音楽室においで。」
後ろから囁かれて耳に湿った色っぽい声がかかる。
一瞬、何をされているのか分からなかった。
「は?」
あたしは驚いて思わず颯太を振り返る。
颯太はニコッと笑って口に人差し指を当てて言う。
「お兄さんのご趣味についておしえてあげるよ。」
「…!」
それは………
聞きたいような、聞きたくないような…。
あたしが微妙な顔をしていると、颯太はあたしの頭をポンと撫でた。
「そんな落ち込むようなことはないと思うから大丈夫だって。あ、お弁当も持っておいで。長くなるから。」
かくして、お兄ちゃんの秘密だったあの趣味について
あたしは知ることになったんだ。
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