化学室のノート【短編】



「ノートの相手があなたでがっかり、なんて私絶対思ってない!!!」




私の大声は
化学室中に響き渡った。




その声に彼は
心底驚いたようだった。




「私は、うれしかったの。
あなたとの四ヶ月、
堪らなくうれしかった。

あなたが私の書いた答えに
返事をくれるたびに
胸が締め付けられるくらい、
ただ、うれしくて……」




やだ、吐息に涙が交じる。




泣きたくなんてないのに
どうしようもなく胸が苦しい。




「あなたの返事を見る度に
切ないくらいにあなたに焦がれた

あの曲を聞くたびに
これがあなたが私に向けてくれる言葉だったらって、何度も祈った……!!」




ついに、
涙が一筋頬をつたって流れた。




そのまま
彼の深い瞳を真っ直ぐ見据える。




「がっかりなんて、
してやんない。
あの人が目の前にいるのに
がっかりなんて出来るわけない」




それとも、と私は話を区切る。




「がっかりしたのは
あなたの方じゃないの…?」