「……」

 手際よく調理していく様子を呆然と見つめて、良かった名乗り出なくて。

 どう考えてもあたしの方がヘタだわ……と胸をなで下ろす。

 無駄のない動きに見とれているあいだにパエリアは完成した。

 正確に言えばパエリアが完成する間に別の料理も作っていたのだが。

 パエリアと買ってきたバケット、コーンスープにグリーンサラダがテーブルの上に置かれ食事が始まった。

 予想通り、彼の食べ方る姿は上品だった。

 傭兵というのが未だに信じられない。

「……」

 パエリアに父さんを思い出す。

 ああ、そうだ。この味父さんの味だ……嬉しくて口元がゆるむ。

 きっと父さんはこれを覚えるのに大変だったんだろうな、だってパエリアだけは美味しかったんだもの。