「ふう」

 さっぱりした部屋を見回し、溜息混じりに笑う。

「こんなに広かったんだな~」

 キッチンに足を踏み入れて感心するように発した。

 彼女が産まれる前から人が生活していた家は、その生きた証が所々に刻まれている。

 懐かしむように指で傷をなぞり全体を見回した。

 思い出は連れていける、だから寂しくなんかない。

「さて……ベリルさんが来るまで外食ね」

 電化製品を売ったお金で1週間くらいは持ちそうだ。

 父さんが残してくれたお金も結構あって、実は10年くらいは働かないでも暮らせそうだった。

 先のことは解らないから働くコトはしたいんだけど……傭兵の弟子にもお給料って入るのかしらね?

「あ、荷造りもしなくちゃ!」

 階段を駆け上がり、スーツケースをクローゼットから引っ張り出した。

 そして、かけられている服を確認するように眺める。

「チャラチャラした服はダメよね」

 なるべく動きやすい服を選んでベッドに投げ置いて、一通り済ませるとスーツケースに詰め始めた。