「! ……?」

 再び差し出されたチェス盤に怪訝な表情を浮かべた。

「ベリルさんが持っていてください。あたしには家のチェス盤があるから。これは、戦友だったあなたに持っていて欲しいです」

 小さく頷きチェス盤を受け取って確認するように手を滑らせる。そして、2つに折られた盤を開き中の駒を出して並べていった。

「これはね」

 並べながら発する。

「クイーンが無いのだよ」

「!?」

 全て並べられたチェスの駒のキングと対をなすハズの、そこにあるべきクイーンが無くぽっかりと空いていた。

「無くしたの?」

「奴がね」

 懐かしむように駒を動かしながら彼は付け加える。